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更新日:2021年7月12日 ページID:037087
抗議文
2002年10月01日
在本邦アメリカ合衆国大使館
特命全権大使
ハワード・H・ベーカー 閣下
長崎市長 伊藤 一長
貴国が9月25日、1989年にトリチウム生産施設を閉鎖して以来、13年ぶりにテネシー渓谷開発公社に対し水爆の燃料となるトリチウムの製造免許を与えたとの報道に接しました。
今回のトリチウム生産再開の決定は、同じく本年5月に発表されたプルトニウムピットの製造再開とともに、貴国が一定の核兵器を保有し続ける方針を明確に打ち出したものにほかならず、1988年の中距離核戦力(INF)全廃条約発効以来の核軍縮の流れに逆行する暴挙と言わざるを得ません。
貴国は、本年5月にロシアとの間で戦略核兵器を大幅に削減する「戦略攻撃兵器削減条約」を締結しました。しかしながら、同条約は、核兵器の解体により取り外す核弾頭の多くを備蓄することとし、実質的には削減には程遠い大量の核弾頭を保有し続けようとするものです。このたびのトリチウムの生産再開は、そのために不足する核弾頭を補うとともに、より高性能の核兵器を製造し、核抑止政策を誇示しようとすることを如実に物語っています。
包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准拒否や核による先制攻撃の可能性など、貴国の一連の核政策は、独断的と言うほかなく、私たちは心からの憤りを禁じ得ません。
昨年9月11日に貴国で発生した同時多発テロ以降、国際紛争が頻発し、国際社会は、一日も早い平和と安定を待ち望んでいるところであります。
このような中にあって、核軍拡競争への扉を再び開き、平和への道を閉ざそうとする貴国の行為は、核実験禁止と核兵器廃絶を訴えつづけてきた長崎市民をはじめとする世界の人々の願いを無視し、長年にわたる国際社会の努力さえも無にしようとするものであり、断じて容認することはできません。
57年前、わずか1発の原子爆弾により15万人もの市民が死傷した被爆都市長崎を代表し、このような貴国の姿勢に対し厳重に抗議します。
貴国は、直ちにトリチウムの生産再開方針を撤回するとともに、包括的核実験禁止条約(CTBT)を早期に批准し、2000年5月のNPT再検討会議で採択された「核保有国による核兵器廃絶への明確な約束」を誠実に実行することによって、核兵器のない平和な21世紀の実現に向け、世界の大国としての責務を果たすよう、ここに強く求めます。
原爆被爆都市長崎の市民の名において抗議文を送付しますので、速やかに本国へ伝達されますようお願いいたします。
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