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ミス・サンシャイン

更新日:2022年5月1日 ページID:038512

rogo

 「人はあまりにもつらく苦しい体験をしたとき、その記憶を封印し、語ろうとはしません。語るためには思い出さなければならないからです」
 5年前の平和宣言の中の言葉です。
 被爆体験、それに続く戦後の体験は、その重さゆえに多くの人に“記憶の封印”を強いてきました。話さないのではなく、話せないのです。
  「それでも被爆者が、心と体の痛みに耐えながら体験を語ってくれるのは、人類の一員として、私たちの未来を守るために、懸命に伝えようと決意しているからです」
 平和宣言はそう続きます。被爆体験の継承は長崎の使命ですが、「心」とつながっているとてもデリケートなテーマでもあります。

 長崎出身の作家、吉田修一さんが最新作『ミス・サンシャイン』を発表されました。
 一人のファンとしていつも思うのは、もし心がいろいろな感情を感じて動くことを「感動」と呼ぶのなら、吉田さんの作品にはいつも感動してしまうということです。読みながら、切なくなったり、苦しくなったり、ホッとしたり、うれしくなったりと心が動くのです。
 でもそれとは別に、この作品を読んだ後に感じたことがありました。
 一つは、被爆体験を物語によって伝える可能性を感じさせてくれたことです。原爆が人の人生に与えた影響をこんな方法で伝えることができるんだな、と思いました。
 もう一つは、原爆について、言えない思いを持つ人にスポットを当ててくれたことへの感謝です。ふるさと長崎の人たちへの吉田さんのあたたかい思いを感じました。
 一人でも多くの人に、この物語を読んでほしいと思います。

gazou

「ミス・サンシャイン」

吉田 修一/著

文藝春秋

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