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令和6年8月2日(金曜日)11時30分~12時00分
会見の様子(YouTube動画)は、こちら<外部リンク>
鈴木市長
皆さん、こんにちは。今日は長崎平和宣言の骨子についてご説明させていただきたいと思います。それでは座ったままでご説明させていただきます。
宣言文につきましては、起草委員会の委員の皆様からも多くの貴重なご意見をいただきながら慎重に検討してまいりました。
今年の平和宣言では、ウクライナ侵攻及び中東情勢におきまして大変悲惨な状況が続いている中、79年もの間、人類が守り抜いてきております「核兵器を使ってはならない」という人道上の規範をこれからも守り続けることができるのか、被爆地は非常に強い危機感を抱いていることを表明した上で、核保有国と核の傘の下にいる国に対し、核兵器廃絶に向け大きく舵を切るよう求めるとともに、市民社会に向けては、「地球市民」として行動を起こすよう呼びかけるものにしたいと考え、今回宣言文を起草いたしました。
それでは、宣言文の流れに従って、その骨子をご説明いたします。
まず冒頭で、被爆者の福田須磨子さんの詩を用い、被爆の惨状と被爆の訴えを強く発信いたします。
次に、昨今の核兵器をめぐる国際情勢の中、「核兵器を使ってはならない」という人道上の規範が大きく揺らいでいることへの危機感を表明いたします。その上で、核保有国と核の傘の下にいる国に対し、各国指導者の被爆地訪問を呼びかけるとともに、各兵器廃絶に向け舵を切り、外交努力により平和的な解決への道を探るよう要請いたします。
また、日本政府に対しては、核兵器禁止条約への署名・批准、憲法の平和の理念の堅持の訴え、北東アジア地域の緊張緩和と軍縮に向けたリーダーシップの要請、さらには被爆者援護の充実と被爆体験者救済を求めます。
市民社会に向けては、地球市民として様々な違いを超えてつながりあえば、思い描く未来を実現することができるとの呼びかけを行ってまいります。
最後に、原爆犠牲者への哀悼の誠をささげるとともに、地球市民と連帯し、「平和の文化」を世界中に広め、核兵器廃絶と世界恒久平和の実現に向けてたゆむことなく行動し続けるという決意を宣言して、結びの言葉とさせていただきます。
8月9日の平和祈念式典では、被爆地の平和への強い思いを発信し、核兵器廃絶と恒久平和の実現という被爆地の願いをしっかりと世界の人々に伝えてまいりたいと考えております。
なお、宣言文は英語・中国語・韓国語・ロシア語・フランス語・オランダ語・アラビア語・スペイン語・ポルトガル語・ドイツ語の10か国語に翻訳してホームページに掲載し、世界中に向けて発信いたします。
私からの説明は以上でございます。
記者(西日本新聞)
まず、何度もお伺いはしておりますが、改めて今回の平和宣言で、市長が最も訴えたかったことについて教えてください。
鈴木市長
今回の宣言では、まず国際情勢に対する認識といたしまして、特にウクライナ侵攻、それから中東情勢において大変悲惨な状況が続いていると。核兵器廃絶に向けた動きに関しては、国際的にも核抑止の風潮が強まりかねないという強い懸念がございます。そういう中、我々がこれまで守り抜いてきた核兵器を使ってはならないという人道上の規範を、これからも守り続けることができるかという危機感を持つ中で、核保有国、そして各の傘の下にいる国に対して、核兵器廃絶を強くリーダーシップを発揮して大きく舵を切るように求めていきたいということ。そして何よりも、市民社会に向けて地球市民ということで、一人一人が当事者を持って行動を起こすこと、それを強く呼びかけたいということ、それが私の思いとしてございます。それを今回、宣言文として反映させていただきました。
記者(西日本新聞)
ありがとうございます。次に2点目ですが、これまで3回あった起草委員の中では、イスラエルをはじめとする特定の国名を明記するか否かについて議論があったかと思います。その点について、今回結論はどうされたのでしょうか。理由も含めてお答えください。
鈴木市長
これまでも各国、特定の国に対する言及した案を示した経過がございます。ただ、それに際して、起草委員会の場で委員の先生からも、その特定の列挙した国以外にもいろんな動きがあるという中で、全体としてその国際安全保障環境が悪化しているということを訴える必要があるという意見もございました。いろんなご意見を伺う中で、緊迫度を増す現下の国際情勢の危機感を示すという文脈でございますので、そういう文脈の中で起草委員の皆様からのご意見も踏まえまして、限定的に国名を列挙するのではなくて包括的に記載をすると。その中で、申し上げたような国際情勢の危機感を表現するということにさせていただきました。以上でございます。
記者(西日本新聞)
ありがとうございます。最後にですが、先日、イスラエルについては、今年の平和祈念式典では招請しないという旨を決断されたかと思いますが、当事国の参加がない中で、今回の平和宣言に含まれるような訴えを、どのようにして当事国に伝えていくかというところをお考えがあれば教えてください。
鈴木市長
ご指摘のとおり、平和祈念式典、被爆の実相を知っていただき、それによって平和への思いを共有していただく、そのためにも被爆の実相に触れるべく、あらゆる国に平和祈念式典に参加していただきたい、それが被爆地長崎としての基本的な思いでございます。そういう意味では今回招待できなかった国があるということは、このように被爆地長崎市としても大変残念なことではございますけれども、昨日申し上げましたとおり、不測の事態の発生のリスクなどを懸念した上で、式典の円滑な運営との観点から、参加者について一部招待を断念したという経緯がございます。そういった国に対しても、引き続き、まず今回の平和祈念式典、先ほど申し上げましたとおり、ホームページでも、その平和宣言を10か国語で発信するということにもしております。それで世界中に向けて発信するという中で、式典の様子もインターネット配信、これは日本語・英語でございますけれども、インターネット配信しております。そういうことによって、広くそういった国に対しても伝わるように努めてまいりたいというふうに思っております。以上でございます。
記者(長崎新聞)
先ほどの話の関連ですけれども、まずロシアのウクライナ侵攻には具体的に触れて、中東情勢についてはイスラエルなど具体的に示さずに、中東情勢の、例えば深刻化などという形で触れるということでしょうか。
鈴木市長
基本的にそれぞれの紛争について言及するということで同様だというふうに思っております。その紛争のその名称をどういうふうに表現するかという中で、ロシア・ウクライナというのは、それを特定する中でそういうふうにしておりますけれども、中東のほうについては中東情勢ということでくくった形で国名が出てない部分があるかもしれません。
記者(長崎新聞)
分かりました。中東情勢という形で触れるということですけれども、これは具体的に何を念頭に平和宣言の中で触れるということでしょうか。
鈴木市長
これはもう中東で行われている今の紛争、これは広く考えております。
記者(長崎新聞)
分かりました。これまでの起草委員会の会合の中でも、その具体的に国民に言及しないということの理由として、長崎が訴えるべきメッセージを明確にするというふうなご発言も市長からもあったと思いますけれども、鈴木市長として長崎のメッセージというのが、長崎が訴えるべきメッセージというのがどういうものかというのを改めて教えていただけますでしょうか。
鈴木市長
先ほども申し上げましたけども、まずはその国際情勢に対するその危機感、被爆地としての危機感。つまり、核兵器を使ってはならないという人道上の規範がこれまでずっと守り抜いてきたわけでございますけれども、これが本当に守り続けられるのか、そういうことへの危機感、焦りがございます。そういう観点で、今の国際情勢に対する危機感を有しております。その危機感をしっかりと伝えさせていただきたいというふうに思っております。
記者(長崎新聞)
ありがとうございます。宣言の中では中東情勢という表現をされるということですけれども、起草委員会のこれまでの会合の中でも、イスラエルによるガザ攻撃、その非人道性について言及するよう求める意見があったということを踏まえての質問ですけれども、今回イスラエルを平和祈念式典に招待できない理由である、不測の事態が起きるほどに国内外で注目されて、それに対する反発もあります。なので、改めて市長としてイスラエルのガザ攻撃について、どのようにお考えになるのか、市長のお考えを教えていただけないでしょうか。
鈴木市長
今ガザ地区における人道状況、いろんな報道に接しますけども、そういう人道状況に関して深い憂慮を持っております。こういう状況が一刻も早く改善されるように、一刻も早い即時停戦を求めていきたいと思います。
記者(長崎新聞)
ありがとうございます。あと1点お伺いします。今回、被爆者の福田須磨子さんの詩を用いられるということですけれども、具体的に例えば、この詩を用いるということは今の時点で言えるのかということと、福田須磨子さんの詩を用いる理由について、教えてください。
鈴木市長
福田須磨子さんの詩を今回引用させていただきます。それはやはり、実際に自ら被爆を体験し家族を失い、そして後遺症を患う、そういった被爆した後の苦難の人生を生き抜いてこられた福田須磨子さんの魂の叫びが、この詩の中に読まれていると思います。そういう力強い言葉で表現された魂の叫びを取り入れる。これは核兵器がもたらす非人道性、非人道的な結末、あるいは被爆者の切実な思い、まさに魂の叫び、これが表現されているという意味で、今回のテーマにふさわしい内容であると感じ採用させていただきました。
記者(長崎新聞)
現時点で、どの詩を使うということは、そこまで公表されるのでしょうか。
鈴木市長
そこまではちょっと公表はしておりませんので、ちょっとお答えは差し控えさせていただきます。
記者(KTN)
一部の起草委員会の委員の方から、被爆体験者の援護に関して政治的な解決を求めるような文言をちょっと盛り込んでいただけないかというようなご意見もあったと思います。そういった中で、いろんな意見もあって限られた分量の中で、どういうふうにお伝えするか市長も悩まれているとは思いますけれども、改めてお考えをお聞かせください。
鈴木市長
被爆体験者の救済、これは私も昨日、被爆体験者の皆様方とまたお会いさせていただきましたけれども、一刻の猶予も許されない、そういう喫緊の課題であるというふうに思っております。被爆体験者の救済につきましては、これまでも長崎市として県とも連携しながら、政府に対して一刻も早い救済を求めてきたところでございますけども、引き続き、それを求めていきたいと思いますし、またそういう訴えについて、宣言の中でも言及させていただきたいと思います。
記者(日本経済新聞)
先ほど長崎新聞の方から、福田須磨子さんの何の詩を引用するかという質問があったのでお聞きするのですけれども、最も代表的なのは「ひとりごと」という、原爆の後の後遺症とか経済的困窮を訴えた詩です。これから引用するのでしょうか。
鈴木市長
そこも含めて、ちょっとお答えを差し控えさせていただきたいと思います。恐縮です。
記者(朝日新聞)
今のに関連するのですけど、朝日新聞です。多分、起草委員会とか、その参加されている方で、原爆をつくる人々へみたいな、要はそういうその開発、アメリカとかありますけど、そういう何かメッセージ性がやっぱり今、そのオッペンハイマーとかの映画もありますし、そういう時代性を反映してるというような話もあったのですけども、そういうイメージで捉えてはいたんですけども、そういう趣旨で被爆の、戦後の被爆に遭ってからのそういう苦しさとかもそうですけども、その原爆をつくる人へのメッセージみたいな、そういうトーンはあるのでしょうか。この詩を引用する上で。そこぐらいはちょっと知っておかないと厳しいのですけど。
鈴木市長
先ほど申し上げましたとおり、あくまでも被爆者の方のそういう思いですね。そういう中にはいろいろなものも含まれると思いますけども、そういったことも含めて採用させていただいております。
記者(朝日新聞)
最後、その国名の列記というか、ちょっと確認ですけども、ウクライナ侵攻に関しては、そういう枕言葉としてロシアという言葉は出るけども、その中東情勢に関しては、もうイスラエルとかイランとかもあるのかもしれないですけども、だからもうロシアは入れて、イスラエルは入らないという、そういう理解でいいのでしょうか。
鈴木市長
お答えいたします。そこの紛争をどう表現するか、表記するか、それによってどう特定するかという話だと思うんですけども、中東情勢については中東情勢という形で、中東ということで広く言っております。以上でございます。
記者(朝日新聞)
書簡とかでも停戦を求めるとかですね、今もそのイスラエルのガザの攻撃に対しては憂慮されているという、そういうメッセージは持ってらっしゃるんですが、ただ世界に発信するときには何かそこがもやっとするというかですね、その辺り、受け止めによっては、何でそういう宣言なんだろうという、多分そういう疑問が生まれるかとも思うんですけども、その辺を踏まえて、今の市長がどう考えているのかというのも率直に知りたいんですけど。
鈴木市長
お答えいたします。先ほども申し上げましたとおり、この平和宣言文がどういう趣旨で何のために行っているかということでございますけども、今回の趣旨といたしまして、あくまでも今の国際情勢に対する危機感を表明すると。その危機感、危機感というのはつまり、その核兵器を使ってはならないという人道上の規範が今後守られないかもしれないということへの強い危機感でございます。そういう危機感を表明した上で、核兵器廃絶に対して広く呼びかけていく。それは核保有国、核の傘の下にある国もそうですし、市民社会に対しても行動を起こすよう求めていくということでございます。そういう中で、その国際情勢の危機感という中で、その国際情勢を限られた時間の中でどういうふうに表現するかという問題かと思います。
記者(長崎新聞)
今の関連ですけれども、そのメッセージとしては今の核兵器を使ってはならないという人道的な規範が揺らいでいることへの危機感ということですけれども、その現に起きている戦争、または戦闘行為の中で、例えばロシアのプーチン大統領は核の威嚇を繰り返しており、イスラエルの閣僚が戦闘の中でのその核兵器使用の可能性にも言及したりですとか、これはつまりその人道上の規範が揺らいでいるということの証左ではないかと思いますけれども、そこには宣言の中では具体的なものとして示さないのか、そのお考えを教えていただけますでしょうか。
鈴木市長
宣言の中では、そういうことも含めて包括的な形で強く非難してというか危機感を表明して、その上で核兵器廃絶を求める内容にしております。
記者(毎日新聞)
市長が先日イスラエルの招待見送りを発表された後に、イスラエルの大使の方が不招待を決めたことは遺憾であり、長崎市がこれまで示してきた市政の根本に反し、世界に間違ったメッセージを送っていることになりますということをSNSで公表されてますが、その点について市長はどう感じてらっしゃるかということと、あと市長は不測の事態が起きるかもしれないから招待しないんだというご説明だったと思いますが、イスラエルのこの大使の方の発言を見ていると、その意図が伝わってないというか、長崎市がこれまで示してきた市政の根本に反し世界に間違ったメッセージを送っていると。その市長がお考えのこととずれてるというか、違うふうに受け止められてメッセージを発せられ、それに対してもSNS上で、長崎市が招待しないことへの賛否が、市長のそのお考えとは違ったところで物すごく爆発的に増えてるという状況がありますけども、それについては市長として、どう感じられるか、この2点をお聞かせください。
鈴木市長
2つの質問はちょっと共通だと思いますけども、要は私がご説明した内容ですね。イスラエル大使への招待状を発出できなかった理由、なぜそういうふうに判断したかということについて、まだ正しくご理解いただけていないのかなというふうに思いますし、そういう意味では大変残念に思っております。引き続き、粘り強くそこら辺りの理由、趣旨を説明していってご理解いただくように努めていきたいというふうに思っております。
記者(毎日新聞)
長崎市としては、じゃあ改めて何か書簡を送るなり、イスラエル大使館に対して説明に行くなり、何かお考えされてることはあるのでしょうか。
鈴木市長
何らかの形で先方にはご説明するように努めたいというふうに思っております。
記者(毎日新聞)
分かりました。
記者(長崎新聞)
平和起草委員会の会合の中では、例年後半に言及されている、広島ですとか福島ですとか沖縄との連帯についての意見もありました。起草委員の方からもそれに関する意見がありましたけれども、今回の平和宣言では、最終的にそこの表現、表記、言及についてはどのようにお考えでしょうか。
鈴木市長
今回はあくまでも、これは全体として先ほど申し上げましたとおり、キーワードが地球市民でございます。もう地球全体、もう国境は関係なく、あるいは人種・信条・性別、いろんなそのバッググラウンド関係なく、全ての人類が一つになってということを強調したいというふうに思っております。そういう中で、個別具体的な地名を列挙しますと、かえってそのポイントがかすんでしまうと。特に最後の締めの部分とかになると、その辺り大切になってまいりますので、その辺りも総合的に勘案いたしまして、包括的に平和をつくる力になろうとする地球市民の連帯について言及しております。以上でございます。
記者(朝日新聞)
確認です。被爆体験者救済は、盛り込むことでいいんでしたか。その政治的判断はあれだけども、救済自体に関しては触れるという理解でよかったですか。
鈴木市長
はい。触れさせていただきます。