旧長崎市公会堂についての長崎市の考え
更新日:2019年1月9日 ページID:029207
旧長崎市公会堂
旧長崎市公会堂の建設経緯
- 平成27年3月末に閉館した旧長崎市公会堂が建設される以前は、現在の栄町付近に一篤志家からの寄贈を受け整備されたかつての公会堂があり、多くの市民に利用されていました。しかし、この公会堂は、昭和20年8月9日の原子爆弾による二次火災により焼失してしまいました。その後、公会堂の再建を願う市民の根強い声があったものの、戦後の公会堂再建は、戦災復興区画整理事業の換地問題や自治体の財政逼迫などから、容易に進みませんでした。
- このような中、官民からなる長崎国際文化センター建設委員会が発足し、原爆10周年を契機に5ヶ年計画で国内外から資金を募り、図書館・美術館・体育館・水族館・公会堂などの文化施設を建設しようとする計画が立てられました。旧長崎市公会堂は、この長崎国際文化センター構想の一環として建設されましたが、最終的には財源は主に市費で賄われました。このことは、公会堂を一日も早く再建し、市民が日常的に文化活動を行うことができる場を提供したいとの思いによるものと考えています。
旧公会堂の状況
- 旧公会堂は、建設から廃止に至るまで、数々の公演、コンサート、講演会などの文化鑑賞及び活動発表の場として、多くの市民に愛され、長崎市の芸術文化の振興に大変大きな役割を果たしてきましたが、建設から50年以上が経過し、施設設備の老朽化が進み、様々な問題を抱えていました。
- 昭和56年5月以前に旧耐震基準のもとで建設された建物であるため、長崎市耐震改修促進計画に基づき、平成21年度に耐震診断を実施した結果、大型集客施設として必要とされる耐震性能(Is値:0.75以上)を満たしていないことが判明しました。(公会堂0.55~)また、大屋根を受ける架構についても耐震性能を満たしていませんでした。
- 施設内部の設備機器(空調、吊物、照明、音響設備など)は、開館当初から使用しているものをはじめ、いずれも耐用年数を過ぎたものを修繕(応急処置)しながら、使用していました。また、製品によっては製造中止されており、部品の調達も困難な状況でした。これらは、今後、修繕していくだけでは解決できず、引き続き公会堂を使用する場合には、全ての設備機器を取り替える必要がありました。
- このほか、現代の文化ホールとしては、座席配置が窮屈であること、トイレの数が少ないこと、バリアフリーに対応していないこと、楽屋の数が不足していること、練習場を備えていないこと、搬入口が使いにくいことなど構造的な問題点も多く指摘されていました。
- 旧公会堂の安全性の確保や文化施設として必要な設備の更新など、施設が抱える問題点を改善するための大規模な改修を行う場合、相当な費用を要すること、また建物そのものの老朽化が進んでいるために多額の改修費用を投じても、改修後長期間の利用が見込めないことから、補強し施設の延命を図ることは困難との結論に至りました。
- こうした状況を踏まえ、平成22年度に「公会堂については市民の芸術文化活動の場という機能は今後も必要であり、市庁舎の建替え計画の具体化と平行して、機能の確保の方法について引き続き検討する」という方針を決定しました。
- これを受け、平成23年度に「公会堂等文化施設あり方検討委員会」を設置し、旧公会堂が持つ文化施設としての機能や長崎市の文化施設のあり方について、様々な角度から検討していただきました。
- 「公会堂等文化施設あり方検討委員会」をはじめとする市民や市議会からいただいたご意見等を踏まえ、平成24年度には、限られた財源と現在から将来に向けたまちづくりの考え方を勘案した結果、「旧公会堂については解体し、新たな文化施設により市民の芸術文化活動の発表・鑑賞の拠点を確保すること、その整備場所は、現市庁舎跡地を念頭に考えること」などを方針決定しました。
- このような中、平成27年4月1日付で公会堂を廃止するため、平成26年2月に市議会へ「長崎市公会堂条例を廃止する条例」を提案し、継続審査を経て、平成26年6月に「県庁舎跡地の活用において、当事者意識を持ち、特にホール機能については、不退転の決意をもって県との協議を積極的に推進し、早急に県市の意見をまとめること」などの附帯決議を付され可決されました。
- その後、平成27年3月末をもって、長崎市公会堂を廃止しました。
<公会堂廃止までの経緯>
公会堂等文化施設あり方検討委員会報告書の内容
- 旧公会堂が持っていた文化機能や本市の将来の文化施設機能のあり方については、平成23年度に市民の皆様による検討委員会を設置し、ご検討をいただいた結果、次のような報告をいただいています。
・開館から約50年にわたり、長崎市民の芸術文化を支え育ててきた施設であるとともに、市民の皆様に愛されてきた施設である。
・長崎国際文化センター建設計画の一環の中で建設され、DOCOMOMO近代建築100選に選定された近代建築物として評価されているが、文化施設の価値としては、現状では高くない状況にあり、老朽化や耐震性の不足、そして、耐震補強の投資効果を考えると、将来に渡り公会堂を使い続けることは困難である。
・公会堂の機能の全てを市の他の類似施設で補うことは困難であると予想され、不足する機能を確保するためには、老朽化した公会堂に代わる新しい文化施設を建設する必要がある。
・規模については800席程度から1200席程度というご意見が多かった。
・建設場所は、交通の便が良く、まちなかなど人が集まりやすい場所に配置すべき。
- その他の意見としては、「ホール機能以外にも、搬入口や楽屋・練習場の充実、市民のコミュニティ空間としての機能への対応などがあり、現在の公会堂は、市民の文化芸術活動の場として求められている機能を充分に果たしきれていない現状であると言える。」との報告をいただいております。
公会堂廃止後の芸術文化機能の確保
- 公会堂廃止後の芸術文化機能の確保については、「公会堂等文化施設あり方検討委員会」からのご報告や、「市庁舎建替に関する市民懇話会」及び「市庁舎建設特別委員会」からいただいたご意見等を踏まえ、市内部で市庁舎の建替えと併せて議論を重ね、本市に不足する文化機能や利用者ニーズなどを総合的に勘案し、平成25年1月に「公会堂は解体し、新たな文化施設により市民の芸術文化活動の発表・鑑賞の拠点としての機能を確保し、規模については1,000席程度のものを想定する。」という方針を公表しました。
- 当初、新たな文化施設については、市庁舎跡地での整備を念頭に考えていましたが、県庁舎跡地活用の検討の中でも、主要な機能候補としてホール機能が挙げられたことから、県庁舎跡地に新たな文化施設を整備することができれば、近隣地における類似施設の重複整備を避け、より早期に実現できることから、県庁舎跡地での整備(1,000から1,200席で質が高く、芸術性の高い演劇や音楽等の公演の開催が可能なホール)の可能性について県に対して提案を行いました。
- その後、平成28年2月県議会において、県庁舎跡地の基本的な考え方のひとつとして、「歴史あるこの地に相応しい文化の中心となる質の高い文化芸術ホール」が、また、その規模としては、「興行採算性の観点からは1,000席程度のホールに優位性がある」との考え方が示され、併せて、平成28年度中に整備方針を策定し、平成32年度には工事着手が目標であることも示されました。
- 平成30年12月から平成31年3月にかけて、新たな文化施設基本構想策定に係る意見聴取のため文化振興審議会を5回開催し、令和元年7月に新たな文化施設基本構想を策定しました。
- その後、長崎県が実施した県庁舎跡地での埋蔵文化財の範囲確認調査において江戸期の遺構等が確認されたことから、市庁舎跡地よりも早期の完成を実現することは難しいと判断し、令和 2 年 1 月に新たな文化施設の建設場所を市庁舎本館跡地に決定しました。
- 令和2年8月から令和4年10月にかけて、新たな文化施設基本計画策定に係る意見聴取のため文化振興審議会を5回開催し、令和3年3月から令和5年1月にかけて、新たな文化施設を考える市民ワークショップを5回開催し、令和5年4月に新たな文化施設基本計画を策定しました。
- その後、令和5年6月に、新たな文化施設については、まちづくりのグランドデザインづくりに着手することから、その議論や様々な関係者の意見、物価高騰をはじめとする環境の変化等、多面的な視点を踏まえ、再度整理することとしました。
- その整理においては、まず、場所について、施設側の視点及びまちづくりの視点から検討するため「文化振興審議会」及び「長崎都心まちづくり構想検討委員会」の合同会議を開催し、双方の委員の皆様にそれぞれの視点から幅広い議論をしていただき、その結果を踏まえ、令和6年2月に新たな文化施設の整備場所は市庁舎本館跡地とすることを改めて決定しました。
- 一方、その整備場所として決定した市庁舎本館跡地及びその周辺は、再開発により新たな賑わいが創出されつつある長崎駅方面及び長崎スタジアムシティ方面とまちなかや市役所方面とを結ぶ回廊上に位置し、更なる賑わい創出や賑わいの誘導を図るまちづくりを進める上で極めて重要な場所であることから、文化施設としての機能に限定することなく、それ以外の機能をも付加した形での利用も視野に入れて、長崎市の地域活性化に最大限効果を発揮できるまちづくりを進めるための検討を行う必要があります。
- また併せて、長崎市は厳しい財政状況にあることから、資材費、人件費等の高騰の影響で建設費の大幅な上昇が見込まれることも踏まえ、市庁舎本館跡地等の整備費用に係る長崎市の財政負担を極力抑えるよう努めるとともに、整備後の維持管理や運営の費用等の後年度負担についても可能な限り市の財政負担を軽減し、持続可能な事業形態とする必要があります。
- そのようなことから、市庁舎本館跡地等の活用に向けて、効果的な事業実施につながるよう、官民連携の手法等による民間活力の導入についての可能性等を把握するため、令和6年6月からサウンディング型市場調査を実施しています。
- 新たな文化施設を整備するに当たっては、今後も文化施設に関わる様々な立場の方々の意見をお聞きし、参考にさせていただきながら、旧公会堂の課題を解消し、芸術文化の表現の場として十分な機能を備えた誰にとっても使いやすい施設にしたいと考えています。
旧公会堂の建物としての価値
- 旧長崎市公会堂は、昭和37年に建設され、50年以上に渡り、市民の芸術文化活動の発表・鑑賞の拠点として中心的な役割を担ってきた施設です。
- 旧公会堂は、長崎市出身の建築家である武基雄氏の研究室で設計され、戦災復興の取り組みの中で整備された経緯や、平成15年には、DOCOMOMO Japanの日本近代建築100選に選ばれるといった、建築物としての価値は、一定理解しています。
- しかしながら、旧公会堂はあくまでも文化施設であるため、その第一義的な価値は、文化施設としての必要かつ十分な機能を有することであると考えています。
- 旧公会堂は、大規模改修を行ったとしても解消できない課題が残り、現代の文化施設としての機能を十分果たせないことから廃止し、新たな文化施設を整備することとしました。
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