ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
長崎市遠藤周作文学館 > 遠藤周作文学館 > 文学講座 > 第19回文学講座(H24.7.15)

本文

第19回文学講座(H24.7.15)

ページID:0020126 更新日:2025年3月14日更新 印刷ページ表示

題目 信(しん)の問題――「海と毒薬」と「沈黙」
講師 中野和典氏(福岡大学講師)

 平成24年7月15日(日曜日)、福岡大学講師の中野和典氏をお迎えし、「信(しん)の問題――「海と毒薬」と「沈黙」」の題目で第19回文学講座を開催いたしました。
 講師は長崎市住吉のお生まれで、現在、ご実家は文学館から国道202号線を佐世保方面へ40分ほど北上した西海市大瀬戸町にあられるとのことで、幼少期にお父上と交わした会話を交え、文学館が建つこの外海への思いなどを熱く語られました。
 また『海と毒薬』は、小説の中心的な事件となる第二次世界大戦下の生体解剖実験について、その事件が実際に行われた当時から十数年を経た時点を語りの視点とし、勝呂が当時を回想するという形式を採っていることを指摘されました。そして、そこに勝呂の罪意識の深さが表現されており、救済されえぬ現代的苦悩のさまが描き出されているとの解釈を示されました。
​ 続く『沈黙』では、遠藤がフィクションとして作り出した「史料」をもとに作品が構成されているため、読者は『沈黙』の物語内容を実際にあった事柄だと「信じる」という効果を強く受け、ロドリゴの心情に寄り添った読書体験が可能となる。その上で、ロドロゴは、自身の信仰について、フェレイラを始めとする作中人物たちとの「対話(問答)」を通じて既成の概念では見出し得ない新たな「私の主」を発見していく。そこに『沈黙』の真価があると話されました。


第18回文学講座(H24.3.24) 文学講座 第20回文学講座(H24.9.8)