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第6回文学講座(H20.7.27)
題目 遠藤周作における『かくれ切支丹』理解
講師 宮崎賢太郎氏(長崎純心大学)
平成20年7月27日、約50名の参加者に恵まれ「カクレキリシタン」研究で有名な長崎純心大学の宮崎賢太郎先生をお迎えしての講座が開催されました。
先生ご自身、遠藤周作の『沈黙』を読まれた経験から「カクレキリシタン」研究を志され、その世界にドップリとはまられたのとのことで、遠藤文学にも造詣深く、講座は、遠藤作品にみられる「かくれ切支丹」(注、遠藤表記)への言及を丹念におったレジュメを元に進められました。
まず、遠藤作品における「かくれ切支丹」把握の特徴として挙げられる「先祖崇拝」について、宮崎先生ご自身が調査を進める中、最初は遠藤と同じく「先祖崇拝」がその根本にあるとの見解に達せられたとのことでしたが、現在は「先祖崇拝」よりも日本人の宗教心一般にみられる「現世利益」的な側面の方が「カクレキリシタン」の信仰の中心にあるのではないかと示されました。その上で、遠藤による「かくれ切支丹」理解の中心となる「母親への思慕」=「聖母マリア信仰」について、「母親」への思いを直ちに「聖母マリア」への信仰心へと重ねていくというところが小説家・遠藤周作ならではの妙技であり、極端な言い方をすれば、「今からでも、日本のキリスト教を遠藤先生流に日本化すれば、日本におけるキリスト教信者は、加速度をつけて増えるはず」と、隣国・韓国でのカトリック受容が韓国的なキリスト教を認めた上での成功であるありようを例に挙げながら、お話くださいました。