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第8回文学講座(H21.9.12)
題目 黄禍論の系譜から読む遠藤周作
講師 松本常彦氏(九州大学)
平成21年9月12日、作家で言えば「芥川龍之介」研究がご専門の松本常彦先生をお迎えし、講座を開催しました。
芥川がご専門の先生は、遠藤周作は芥川からの流れを汲んだ文学者であり、遠藤文学にみられる「黄禍論」にまつわる問題は、日本近現代文学史上の問題として大変興味深いものがある、とされ、明治以降の黄禍論の流れを踏まえるため、遠藤周作にとっての洋行の先達である森鴎外・永井荷風等の言説(自分と西洋人を重ねる視線)や高村光太郎の言説(黄禍論と反黄禍論を同居させる視線)と共に彼等が生きた時代の日本と欧米の関係性をつまびらかにし、芥川の「神々の微笑」には、「白禍」と「黄禍」がせめぎあう場が特徴的に描かれていると示されました。
その上で、遠藤独自の視点を一番印象深く感じるのは、敗戦後の国民としての「黄色い人」が、クリスチャンとして「神」・「罪」の問題に捉われた時、卑小で卑屈な弱者(ユダ的存在)を凝視する視点からのみ作品が創られているという点であると説かれました。
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