本文
第28回文学講座(H27.2.2)
題目 遠藤周作と軽井沢――作品と交友を中心に
講師 大藤 敏行氏(軽井沢高原文庫副館長)
平成27年2月21日(土曜日)、軽井沢高原文庫副館長の大藤敏行氏をお招きして文学講座を開催しました。軽井沢と遠藤周作との関係は、昭和19年に信濃追分に病気療養中の堀辰雄を訪ねたころに始まります。その後、フランス留学を経て、小説家として文壇に出て以降は、夏を軽井沢の貸し別荘で過ごし、昭和43年には千ヶ滝に山荘を建てるなど、北杜夫や矢代静一ら友人たちとの交友の場にもなりました。
本講座では、遠藤ゆかりの軽井沢にある軽井沢高原文庫の副館長で学芸員でもいらっしゃる大藤氏にお話しを伺いました。講座ではたくさんの写真資料のほかに、遠藤の最初の評論「神々と神と」が掲載された雑誌「四季」(昭和22年)や直筆の書簡などもご持参いただき、それらを見ながら遠藤と軽井沢との関係性について興味深いエピソードをたくさん聞くことができました。その中から一つご紹介いたします。
遠藤は慶応義塾大学仏文科時代にフランス文学者の佐藤朔に教えを受け、フランスの現代カトリック文学への関心を深めました。昭和22年、ロシア文学者の神西清が編集をしていた「四季」に「神々と神と」が掲載され、評論家への道を志します。
その神西が「神々と神と」を「四季」に掲載する前、昭和22年3月21日付の「高原」編集者の掛川長平に宛てた葉書の内容がとても興味深いものでした。当時無名の学生である遠藤の「神々と神と」を推薦するもので、〈真摯・純粋な筆者の態度〉に心を打たれたという神西の感想が書かれています。
受講者は実際に生の資料を通して、遠藤周作が作家になる前の文筆活動やその周辺の人間関係に思いをはせる時間となりました。