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第6回企画展「遠藤周作と映画」
灘中学(旧制)時代には、同時代のヒーローであった嵐寛寿郎演じる鞍馬天狗に憧れ、大学卒業(昭24年)の折には映画俳優を目指して松竹助監督試験を受けたこともある遠藤周作は、小説家を志して以後も、自身の小説作法に映画の手法を取り入れようと努めた作家です。また、幼い頃より映画が好きで、映画の道への門戸を叩いた経験もあり、「少しでも日本映画界を盛り上ることが出来るなら」と、昭和59年からは「にっかつ芸術学院」の二代目院長を務め、人材育成に有用と思われる外部講師陣を充実させることに精力を注ぎました。そして、原作が映画化される際には、制作費の出資を募る際にも関係者とともに頭を下げてまわるなど映画への思い入れは人一倍強かったといいます。なお、遠藤周作は、『沈黙』(新潮社 昭41年3月)をはじめ、『わたしが・棄てた・女』(「主婦の友」昭38年1月~12月号)『海と毒薬』(「文学界」昭32年6、7、10月号)『深い河』(講談社 平7年3月)など、主要作品の多くが映画化された作家でもあります。
そこで今回の企画展示は、展示室Iにおいて、幼少期から映画好きで自身の小説作法にも映画の手法をたぶんに取り入れようとした遠藤周作の足跡をふくめ、原作者と映画の世界をポスターやパンフレット、スチール写真をはじめとする約100点の資料とともに紹介しています。また、展示室IIにおいては、原作者としての遠藤がもっとも愛した舞台である音楽座による「泣かないで」(原作・『わたしが・棄てた・女』)を中心に、遠藤文学における舞台の紹介を行っています。
なお、特別コーナーを設け、新資料「われら此處より遠きものへ」(習作期草稿)及び執筆当時の日記(昭30年頃)も展示しています。