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遠藤周作を偲ぶ一日(H24.10.20)
遠藤周作を偲ぶ一日(H24.10.20)
短編「母なるもの」朗読とトーク
講師 矢代朝子氏(俳優)×加藤宗哉氏(作家)
本年の偲ぶ一日は、俳優の矢代朝子氏をお迎えして短編「母なるもの」(「新潮」昭44年1月号)の朗読を拝聴し、その後、作家の加藤宗哉氏を交えた対談を伺いました。朗読は、会場全体が作品世界に引き込まれたかのような一体感に包まれ、朗読後は拍手喝采でした。今日、はじめて、矢代氏の朗読を聴かれたという加藤氏は、作品に慎ましやかに寄り添うような素晴らしい朗読であったと絶賛されました。
作品は、『沈黙』執筆後の遠藤が、そこで打ち出した母性的なキリスト教という側面を確立するため、自身の母親体験と長崎のかくれ切支丹信仰とを絡めて描いた短編です。矢代氏は、作品の舞台となったこの長崎という土地で読んだ今日、かくれ切支丹の人々の描写のあたりで、練習中では感じなかったさまざまな思いが去来し、感極まったと話されました。また、作品の言葉と読む場所の風景が融合することによって、新たな光景が生まれることの愉しさを、体感させてくださいました。
いつか文学館入口のテラスで、海を背景として、この外海の自然のなかで再び遠藤作品を朗読したいと仰ってくださいました。そのような機会に恵まれることを願う拍手に包まれながら、盛会のうちに終了いたしました。
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